慶應義塾大学医学部教授 井上浩義 研究紹介
21世紀は予防医学の時代であると言われています。しかし現状では、疾病の診断・治療が医療役務の中心を成し、疾病自体の予防・減少に対する役務は十分に機能しておらず、医療費も毎年増加を続けています。慶應義塾大学医学部・井上浩義教授は、これらの問題の解消に向けて、予防医学の中心となるべき「食」の、その根本となる食材の機能性に関する研究を行っています。
「もっと身近なところで日頃の食のところから国民の健康に寄与できるのではないかと。というところで機能性食品をやろうとしています。我々が一番最初に行いましたのが、母乳の成分のラクトフェリンというのがあるんですが、母乳に入っている初乳っていうんですが、その母乳に入っているタンパク質の75%ということは4分の3ですね、4分の3がこのラクトフェリンなんです。このラクトフェリンを牛乳から取り出して、今までは1g10万円くらいしたんですね、それを我々が製造方法を確立することによって、1kgで10万円くらい、要するに価格が1000分の1くらいになった。こういうような技術を我々今作って、実際に製造しているわけです。」
このアポ型ラクトフェリンの研究に関しては、アポ型タンパク質の工業的な製造方法に関する特許が成立し、現在、ニュージーランドで製造され、世界各地で販売されています。
「イオン交換樹脂というもので、ラクトフェリンだけをくっつけるわけです。我々の技術は、このくっつけたラクトフェリンから、ここに鉄があるんですが、この鉄を取り除いてやるという技術をさらに加えたわけです。そうすることによって、このラクトフェリンの効果が今までのものより大体3〜4倍強くなるわけです。ですからこのラクトフェリンから鉄を取り除くための技術が我々の特許になるわけです。このラクトフェリンから鉄を取り除きますと、このラクトフェリンというのは鉄が欲しくて欲しくてしょうがないわけです。今まではあったわけですからね。それがなくなってるんで鉄が欲しくて欲しくてしょうがない。ということで例えば人間の体に入ってくると鉄をすぐ取っちゃうわけです。そうすると人間にとってはこの取られた一個の鉄はすごく微量なので関係ないんですが、取られてしまった細菌とかウィルスにとっては死活問題なんです。細菌とかウィルスは鉄があって初めて生きる事ができるんです。その鉄をとってしまうので細菌やウィルスは死んでしまうわけです。」
現在、アポ型ラクトフェリンは、機能性食品素材や化粧品などに利用されていますが、医薬品として利用するために、蚕を使った遺伝子組み換え技術による、単一構造のアポ型ラクトフェリンの製造に取り組んでいます。
「要はエビデンス、証拠のある機能性素材を正しく世の中の人に使って頂いて、そして予防医療に貢献して頂きたいというのが我々の気持ちです。今後我々が何をやらなければいけないかと言うと、最終的には国民の総医療費を減らして、個々の国民の方が食と運動を通じて、それぞれ健康なまま、健康寿命と平均寿命があるんですが、健康寿命を平均寿命にだんだん近づけるというのが我々の目的です。」