今回は全国の原発で事故が起きた場合の住民避難の可能性について、全国17の原発すべてを交通工学の観点から、国の避難指針(福島第一原発後の新しいもの)が機能するかどうか、データでシミュレートされた上岡直見さんのインタビューを後編をお届けします。
上岡さんのシミュレーションは
(1)原発周辺の住民人口(2)避難路の道路の容量から
(3)過酷事故が起きて放射性物質が漏れ出す時間と、避難人口が脱出にかかる時間の比較計算
をして、30キロ圏の住民が被ばくせずに脱出できるかどうかを計算したものです。
その結果、おそるべき「不都合な真実」が明らかになりました。
今回は
I 全国の原発に貯蔵されている「使用済み核燃料」(ウラン、プルトニウムなどの塊)は1万6670ウラントンにもなる。現在、日本に使用済み核燃料を再処理する施設は稼働していない(青森県・六ケ所村施設は30年近く完成延期)ので、再処理できません。フランスのラ・アーグ再処理施設の年間処理能力は1100ウラントン。フランスにお願いしても16年かかる。そんな移送の手間をかけるより、5〜6年後に崩壊熱が冷めたところで乾式キャスクに移してそのまま原発構内で貯蔵するしかない。
J 福島第一原発でも、デブリの取り出しをするより、地下水を遮蔽するコンクリート壁を作ってそのままにしておくのが現実的。
(前回)
A 全国の原発の脱出路の容量と住民人口を計算すると、住民が被ばくせずに脱出することは物理的に不可能。周辺人口の多い浜岡原発や東海第二原発では5日以上かかる。
B 全国の原発に大量の脱出民を逃がすための「避難道路」は存在しない。片道一車線の県道・国道数本がせいぜいである。そこに最少でも10万人近い避難者が殺到する。クルマが数珠つなぎになってまったく動かない。また地震の場合はその道路も寸断されている。
C 国の避難政策も「住民の被ばくはやむをえない」にこっそり転換していた。30キロ圏では「地上の線量計が上昇したら避難する」という順番なので、住民は必ず被ばくする。これは「原発を再稼働させる」という前提で計算すると、過酷事故が起きたときの被ばくなしの住民避難は不可能だからである。
D 国の命令を守って屋内退避しても、日本には外気の侵入をふせぶ機密構造の家屋はない。エアコンをつけると外気とともに放射性物質が流れ込む。夏はエアコンを切ると熱中症になる。
E 国の命令を守って屋内退避していても、いつか食料や飲料水が切れる。補給のために屋外に出ると、環境はすべて汚染されているので、出たとたんに被ばくする。
F 脱出できても、避難者やクルマに放射性物質が付着しているので、許容量以下かどうか測定(スクリーニング)しなくてはならない。長蛇の列ができる。
G 半島部の付け根に原発がある場合、半島先端方向に放射性物質が流れたら、住民はどこにも避難できない。被ばくしっぱなしになる。能登地震の例でいえば、港も破壊されているので船での脱出もできない。
H 原子炉の稼働が止まって休止していても、安心できない。その横には使用済み核燃料棒がプールで貯蔵されているのでリスクは同じ。使用済み核燃料棒はプルトニウムやウラン、セシウム、ヨウ素などの塊である。むしろ、鋼鉄の格納容器で封印されている原子炉に比べて、バリアはコンクリートの「建屋」しかない。冷却装置が止まったり、プールの水が抜けたりすると、崩壊熱を放つ燃料棒がゆっくり溶けてセシウムなどを放ち、外に出てくる。
こうした検証の詳細は上岡さんの著書に詳しく述べられています。
ぜひご一読ください。
「原発 避難計画の検証: このままでは、住民の安全は保障できない 」(合同出版)
https://amzn.asia/d/bdQL4Bx
「原発避難はできるか」(緑風出版)
https://amzn.asia/d/ikVUEWM
「原子力防災の虚構」(同)
https://amzn.asia/d/ifgiWhx
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